この投稿は残業時間数にフォーカスしています。残業はその他に「質」も大事な指標になります。夜遅くまで一定の質の仕事ができる人間は居ないでしょう。
時間数はともかく、無理なさらないようにしてください。上司や指揮担当者に素直に伝える方が、体も心も楽になります。
自分の残業時間は多いのか少ないのかわからない人は多くいます。この記事では、日本の平均残業時間や業界・職種別の残業時間の実態を解説します。記事を読めば、自分の残業時間が平均と比べてどうなのかを客観的に判断でき、必要に応じた対策を取ることが可能です。
日本の平均残業時間は月に約24時間程度ですが、業界によって大きく異なります。月間の残業時間が平均を大幅に上回る場合、職場環境や業界特有の要因が影響しています。
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残業時間の平均

日本における1か月の平均残業時間について、以下の項目に分けて解説します。
- 日本における平均残業時間
- 世界と比較した日本の残業時間
日本における平均残業時間
日本の労働者の平均残業時間は、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(2022年)によると月約16時間です。月平均残業時間とされる約16時間はあくまで全国平均値であり、企業規模や業種、地域などによって大きな差が見られます。
大企業(従業員1,000人以上)の月平均残業時間は約14時間で、中小企業(従業員100人未満)では約17時間です。中小企業における残業時間が大企業を上回る背景には、一人ひとりが抱える業務負担の重さが影響しています。
東京都の平均残業時間は全国平均より約20%高く、地方都市では都市部より残業時間が少ない傾向が見られます。正社員の平均残業時間が非正規雇用者より約40%多い傾向にあるのは、担う責任の範囲や業務内容の違いが主な理由です。
世界と比較した日本の残業時間
日本の年間平均労働時間は統計上1,607時間で、OECD加盟国の平均1,716時間より短いとされています。しかし、1,607時間の数字だけでは、残業の実態を正確に把握できません。世界の主要国と比較すると、日本の労働時間には以下の特徴があります。
国名 | 年間平均労働時間 | 日本との比較 |
ドイツ | 1,341時間 | 日本より短い |
フランス | 1,490時間 | 日本より短い |
イギリス | 1,558時間 | 日本より短い |
アメリカ | 1,791時間 | 日本より長い |
シンガポール | 1,800時間 | 日本より長い |
韓国 | 1,915時間 | 日本より長い |
日本では「名ばかり管理職」や「サービス残業」の存在により、実質的な残業時間が統計に反映されていない可能性が高いです。国際労働機関(ILO)の調査でも、日本は週49時間以上働く長時間労働者の割合が、先進国の中で高い水準にあります。
業界・職種別の残業時間平均

業界や職種別の残業時間を、以下の項目に分けて解説します。
- 業界別の残業時間
- 職種別の残業時間
業界別の残業時間
IT・通信業界では月平均45時間の残業があり、繁忙期には80時間を超える場合もあります。コンサルティング業界は月平均60時間以上、プロジェクト期間中は80時間を超える残業が発生しているのが現状です。広告・マスコミ業界の残業時間は月平均50時間以上で、納期前には連日深夜まで働く場合もあります。
一方で残業時間が少ない業界もあり、医療・福祉業界は月平均20〜30時間、小売業は月平均25時間程度です。エネルギー業界は月平均25時間、公務員は月平均20時間の残業時間です。金融・保険業界の残業時間は月平均35〜40時間ですが、決算期には50時間以上に増加します。
建設・不動産業界は月平均40時間ですが、現場監督は50時間以上残業する傾向が見られます。製造業の残業時間は月平均30時間ですが、工場のシフトによる差が大きいです。
職種別の残業時間
職種別の月平均残業時間の目安は、以下のとおりです。
職種 | 月平均残業時間 |
教員 | 80時間以上 |
医師 | 80時間以上 |
コンサルタント | 50~60時間 |
法律関係(弁護士等) | 45~55時間 |
IT・エンジニア職 | 45時間前後 |
広告・マスコミ職 | 40~50時間 |
建設・不動産(現場監督) | 40~50時間 |
金融・証券業界 | 35~45時間 |
営業職 | 30~40時間 |
看護師 | 30~40時間 |
運輸・物流業(ドライバー) | 30時間前後 |
比較的残業時間が少ない職種は、公務員と福祉職で月平均20~30時間程度です。製造業の現場作業員の残業時間は月平均15~25時間と、他の職種と比べて少ない傾向にあります。
年代・男女別の残業時間平均

年代や性別の違いによる残業時間を、以下の項目に分けて解説します。
- 年代別の残業時間の傾向
- 男女別による残業時間の違い
- ライフステージと残業時間の関係
年代別の残業時間の傾向
年代別の残業時間の傾向は以下のとおりです。
- 20代:月平均約25時間
- 30代:月平均約20時間
- 40代:月平均約22時間
- 50代:月平均約15時間
近年、20代の残業時間は減少傾向にあります。働き方改革の影響を受け、若い世代は残業に対する抵抗感が強くなっているためです。年代が上がるにつれて、残業よりワークライフバランスを重視する傾向も見られます。また、スキルや経験の蓄積に伴い、残業時間は自然と減少します。
男女別による残業時間の違い

統計によると、男性の平均残業時間は月25.4時間、女性は月18.7時間と、男性の方が約7時間長く残業をしています。性別による残業時間の差が生じる主な理由は、企業内での役職分布の違いです。管理職に就く割合が男性に偏っていることが、男女間の残業時間の差を生む一因となっています。
家庭内での役割分担の違いも、性別による残業時間の違いが生じる要因です。ある調査によると、正社員女性の約4割が「家庭の事情で残業ができない」と回答しています。女性は依然として家事・育児の負担が大きく、時間的制約から残業を避ける傾向があります。
ライフステージと残業時間の関係
ライフステージの変化によって、残業時間は大きく変わります。20代の独身時代は、残業時間が長くなる傾向があります。20代は仕事のスキルアップや評価向上のために、自ら進んで残業する若手社員も多いためです。結婚を機に、残業時間は減少する傾向が見られます。
子育て期には、女性は時短勤務や残業免除を選択し、男性も育児参加により残業を抑制します。子育てが一段落する40代以降は残業時間が増えがちですが、20代のときのような長時間労働に戻るケースは少ない傾向です。親の介護が必要になると、再び残業時間を制限せざるを得ないケースも増えています。
残業時間に関する法律と規制

残業時間に関する法律と規制について、以下の項目に分けて解説します。
- 労働基準法にもとづく残業のルール
- 36協定と適用範囲
- 違法残業の基準と罰則
労働基準法にもとづく残業のルール
労働基準法では1日8時間、週40時間を超える労働は「残業(時間外労働)」として扱われます。労働者に残業をさせるためには、会社と労働者の代表が「36協定」を結び、労働基準監督署に届け出ることが必要です。残業に対しては、通常の賃金に割増賃金を加えて支払う必要があります。
残業の種類別の賃金の割増率は以下のとおりです。
残業の種類 | 割増率 |
通常の残業 | 25%以上 |
深夜残業(22〜5時) | 25%以上 |
法定休日の労働 | 35%以上 |
月60時間超の残業 | 50%以上 |
月60時間を超える残業の50%以上の割増率は大企業だけでなく、中小企業でも2023年4月から適用されています。残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間までとされているのが一般的です。特別な事情があっても、残業時間の上限は年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内です。
36協定と適用範囲

36協定(通称:さぶろくきょうてい)は労働基準法第36条にもとづくもので、法定労働時間を超えて残業をさせるために必要な労使間の協定です。36協定では、残業時間の上限は原則として月45時間、年360時間までと定められています。特別条項付きの36協定を結べば、年に6回まで月100時間未満(休日労働を含む)まで延長可能です。
時間外労働と休日労働を合わせた時間は、月100時間未満、複数月平均で80時間以内の上限があります。ただし、管理監督者と高度プロフェッショナル制度適用者は、36協定の適用対象外となります。36協定の適用対象外の開始時期は、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月からです。
違法残業の基準と罰則
36協定を結んでいる場合でも、以下の基準を超えた残業は違法となり、企業には厳しい罰則が科されます。
- 月45時間、年360時間
- 特別条項付きで年720時間
- 複数月の平均残業時間が80時間以内
- 月100時間未満
違法残業を行った企業は、労働基準法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。違法残業の是正勧告を無視した場合は「ブラック企業リスト」に企業名が公表される危険性もあります。
残業時間が多い場合の対処法

残業時間が多い場合の対処法は以下のとおりです。
- 仕事の優先順位を見直す
- 効率的な働き方を取り入れる
- 上司や同僚へ相談する
- 転職する
仕事の優先順位を見直す
毎日の業務を整理して優先順位をつけると、限られた時間内で重要な仕事に集中できます。すべての仕事に同じ時間をかけるのではなく、メリハリをつける必要があります。仕事の優先度の見直しには「80:20の法則(パレートの法則)」が効果的です。
80:20の法則とは、本当に重要な2割の業務に集中することで、8割の成果を得られる仕組みです。自分の集中力が高い時間帯に重要なタスクを配置する時間管理も有効な方法となります。タスクごとに適切な品質レベルを設定し、必要以上に時間をかけないよう心がけましょう。
効率的な働き方を取り入れる
仕事の質を落とさずに時間を短縮するためには、作業の進め方の見直しが重要です。効率的に仕事を進めるには、集中力を高める工夫が必要です。朝一番に集中力を使う難しい仕事に取り組み、午後は比較的簡単な作業に回すといった工夫をしましょう。
日常的な業務プロセスの見直しも残業削減に役立ちます。メールチェックの時間を1日2〜3回に限定すると、まとまった作業時間を確保できます。デジタルツールの活用も重要です。反復作業の自動化や情報共有ツールを使ったチーム内コミュニケーションの効率化で、作業時間を短縮できます。
上司や同僚へ相談する

職場での残業問題は1人で抱え込まず、信頼できる上司や同僚に相談しましょう。以下のように客観的な事実を伝えると、具体的な状況が共有され、改善策を共に検討しやすくなります。
先月の残業時間は60時間で、〇〇の業務に時間がかかっています。
上司との1on1ミーティングを活用して、働き方の改善について話し合うことも有効です。メンター制度がある会社では、メンターに相談することで新たな視点からのアドバイスが得られる場合もあります。上司や同僚への相談後は改善状況を定期的に確認し、報告することも大切です。
1度の相談ですべてが解決するわけではないため、継続的なコミュニケーションを心がけましょう。
転職する
転職は残業時間の多さに不満を感じている場合に有効な対処法の一つです。近年、転職市場では残業時間の少ない求人が増加傾向にあり、よりよい働き方を求める人にとってチャンスが広がっています。
転職を成功させるには、自身の希望する労働時間や働き方を明確にし、情報収集や準備を丁寧に行うことが重要です。現在の残業時間の記録を取っておくと、転職活動の際に客観的なデータとして活用できます。面接で以下のように希望を伝えることで、ミスマッチを防げます。
月に〇〇時間の残業がある環境から、ワークライフバランスの取れる環境に移りたいです。
残業時間の平均に関するよくある質問

平均残業時間に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 過労死ラインとなる残業時間は?
- 残業時間の管理方法は?
- サービス残業への対策は?
過労死ラインとなる残業時間は?
過労死ラインとは、月80時間以上の時間外労働、または2〜6か月平均で月80時間を超える残業をさします。過労死ラインを超えると、過労死や過労自殺の危険性が高まります。過労死の労災認定基準は、発症前1か月の100時間を超える残業、または発症前2〜6か月間の平均で80時間を超える残業です。
月45時間を超える残業が続くと健康リスクが高まります。過労死ラインを超える長時間労働が行われている職場では、医師による面接指導が義務付けられています。自分の健康を守るためには、体調の変化に敏感になり、早めに対策を取りましょう。
残業時間の管理方法は?

残業時間の効果的な管理方法は以下のとおりです。
- タイムカードや勤怠管理システム
- スマホアプリやエクセル
- 残業申請書
- 残業理由の記録
会社の記録だけに頼らず、自分でも記録をつけると実態との差異にすぐに気づけます。残業時間が多い日や時期のパターンを分析し、効率的な働き方を模索しましょう。上司と残業の状況を共有すれば、業務量の調整や効率化の提案につながります。
サービス残業への対策は?
サービス残業の対策は、自分の労働時間を正確に記録することです。スマホのメモ機能やアプリを使って、実際の出退勤時間を毎日記録してください。タイムカードと実際の退社時間にズレがある場合は、詳しく記録しておくと証拠として役立ちます。
サービス残業に直面したら、労働基準監督署への相談や通報を検討しましょう。社内の相談窓口や労働組合への相談も有効な手段となります。弁護士など労働問題の専門家への相談も、問題解決に向けた重要な一歩です。同僚との情報共有を通じて、サービス残業の状況の把握や連携を図ることも大切です。
» 給料が安い原因と給与アップ方法を解説!
まとめ

日本の残業時間は国際的に見ても長く、IT・金融・広告業界では顕著です。若手社員ほど長時間労働を強いられる傾向があり、残業時間が多い状況が就職先への不満につながっているのが現状です。労働基準法では月45時間・年360時間を超える残業は原則禁止されています。
過労死ラインとされる月80時間以上の残業は、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。残業を減らすために、仕事の優先順位を見直し、効率的な働き方を取り入れましょう。残業時間が多い状況を1人で抱え込まず、上司や同僚に相談することも重要です。
企業の体質や業界特性によっては、残業時間の改善が難しい場合もあります。残業時間の改善が困難な状況では、ワークライフバランスを重視した転職も有効な選択肢となります。
僕も、今までと違う部署に配属されたとき、終電に間に合う時間まで残業をしていました。しかし、経験年数が増えるほど、残業時間は減っていきました。業務になれるとは、そういうことです。
過労死に至るほどの時間をかける前に、まずは自己防衛をしてください。究極、転職という選択肢もあります。