- 毎日遅くまで働いているのに残業代が支払われない
- 「うちは残業代が出ない会社だから」と言われて諦めている
- 残業代請求の方法や相談先がわからず困っている
就職してから実際の労働環境に疑問を持ち始める方は多く見られます。残業代が支払われないという問題は、多くの若手社会人が直面する悩みです。この記事では残業代が出ないケースや原因、残業代が出ない職種、対処法を詳しく解説します。
記事を読めば自分の権利を守るための行動がわかり、不当な労働環境から身を守れます。法律で定められた例外を除き、企業が残業代を支払わないことは違法です。自分の労働環境が法律に違反していないか確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
残業代が出ないケース

残業代が支払われないケースは以下のとおりです。
- みなし労働時間制が適用される場合
- 裁量労働制が適用される場合
- 管理監督者とみなされる場合
- 労働時間が明確に管理できない場合
みなし労働時間制が適用される場合
みなし労働時間制が適用されると、何時間働いても決められた時間だけ働いたとみなされ残業代が出ません。ただし、みなし労働時間制が適用されても、休日労働や深夜労働の割増賃金は支払われます。形式的にみなし労働時間制を適用して、実質的に会社の指揮命令下で働かせるケースは違法です。
みなし労働時間制を適用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 労使協定や労使委員会の決議
- 法律で定められた範囲内の業務
- 業務実態の適合
営業職などは上司が労働時間を正確に把握できないため、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されます。一部の業務だけがみなし労働時間制の対象となり、対象外の業務は通常の労働時間管理が必要な場合もあります。自分の労働条件についてみなし労働時間制が適用されるかは、雇用契約書や就業規則を確認してください。
裁量労働制が適用される場合

裁量労働制が適用されると、実際に何時間働いてもみなし労働時間分の給与しか支払われないため、残業代が出ません。裁量労働制とは、専門的な知識や技術を持つ人が自分のペースで仕事を進められるための制度です。裁量労働制は、労働時間ではなく成果や結果で評価されます。
裁量労働制には主に以下の2種類があります。
- 専門業務型
- 研究開発やシステム分析設計、記事執筆、デザイン、コンサルタントなど19業種が対象です。
- 企画業務型
- 事業運営に関する企画・立案・調査・分析を行う業務が対象です。
裁量労働制の適用には労使協定や労使委員会の決議や従業員代表・労働者の過半数の同意が必要です。企業が裁量労働制を導入するには働き方に自由が確保されており、過重労働を防ぐための配慮があることが条件となります。
裁量労働制が適用されても、出退勤時間が管理されたり仕事の進め方に裁量がなかったりする場合は違法である可能性があります。
管理監督者とみなされる場合
管理監督者とみなされる場合は、労働基準法上の残業代支給義務が適用されません。実際に管理監督者と認められるには、役職名だけではなく実質的な権限や地位が必要です。一般社員と同じ仕事内容で名目上の管理職でも、実質的な権限がなければ管理監督者には該当しません。
管理監督者と認められる条件は以下のとおりです。
- 経営者と同等の立場
- 人事権や採用権
- 経営方針の決定参画
- 立場に応じた基本給
- 自己裁量での業務遂行
管理職の実態として、会社の経営方針や業務運営に関する判断権限が労働者に委ねられている必要があります。会社側が「管理職だから残業代は出ない」と説明していても、実態が伴わない場合は残業代が請求できる可能性があります。自分の立場や権限について疑問がある場合は、専門家に相談しましょう。
労働時間が明確に管理できない場合
労働時間が明確に管理できない状況は以下のとおりです。
- 営業職や出張など社外での仕事
- テレワークやリモートワーク
- 勤務場所が固定されていない職種
成果主義を重視する職場では時間ではなく成果で評価する考え方が強く、労働時間の管理が軽視される傾向があります。緊急対応や突発的な業務が発生した際の時間外労働が記録されないケースにも注意が必要です。サービス残業が常態化している社風の職場では、労働時間の正確な記録が困難です。
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上司の目が届かない働き方では、実際の労働時間と記録される時間に差が生じる場合があります。自己申告制の勤怠管理の企業では、残業を申告しづらい雰囲気や長時間労働を避けるための過少申告が起こります。残業代が支払われるべき正当な労働に対して、適切な対価を受け取れていない状態は違法です。
残業代が出ない原因

残業代が支払われない問題の主な原因は、会社側の不適切な労働時間管理と企業文化です。以下で残業代が出ない具体的な原因を解説します。
- タイムカードを定時で打刻させるから
- 残業時間の上限を超えても支払わないから
- 在宅勤務や持ち帰り残業の不払いがあるから
タイムカードを定時で打刻させるから
タイムカードを定時で打刻させられることは、多くの職場で見られる不当な労働慣行と言えます。企業が実際に働いた時間を短く記録するため、支払われるべき残業代が出ません。タイムカードを定時で打刻させる行為は労働基準法違反にあたります。
しかし、タイムカードの打刻について口頭での指示が多く、証拠が残りにくい点が問題です。新入社員や若手社員は断りにくい立場にあるため、不当な慣行の被害者になりやすい傾向があります。タイムカードの定時の打刻は労働者が雰囲気に流されたり、上司の圧力に屈したりするケースもあります。
タイムカードの定時打刻後も仕事を続けるよう求められる状況はサービス残業です。サービス残業は労働者の権利を侵害する行為であり、法律違反です。
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残業時間の上限を超えても支払わないから

残業時間の上限を超えた分を支払わない慣行は、働く人の権利を侵害する深刻な問題です。企業が残業代を支払わない理由は、コスト削減と法的リスク回避にあります。企業は36協定で定めた残業時間の上限を超えると労働基準監督署の調査対象になるため、記録を意図的に調整します。
企業が残業代を不払いにする手法は以下のとおりです。
- 自己研鑽への言い換え
- 残業申告への上限設定
- サービス残業の強要
- 残業代総額の上限設定
多くの労働者が残業時間の上限を超えた分の賃金請求権を知らないため、企業側が悪用している実態も見受けられます。月45時間・年360時間の法定の残業時間上限を超えた労働に対して、労働者には正当な賃金を受け取る権利があります。
残業代は働いた時間に応じて正当に支払われるべきものであり、企業が上限を理由に支払わないことは違法行為です。
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在宅勤務や持ち帰り残業の不払いがあるから
在宅勤務や持ち帰り残業の不払いは、現代の働き方の変化に伴って増加している問題です。多くの会社では、オフィス外での労働時間を適切に管理できていないため、残業代が支払われないケースが発生しています。問題なのは企業の「会社にいない時間は労働時間ではない」という誤った認識です。
労働基準法では、会社の指揮命令下で行った業務は場所を問わず労働時間とみなされます。リモートアクセスやログイン記録が残業の証拠として認められないケースもあります。持ち帰り残業を暗黙の了解として強制する企業文化は大きな問題です。
勤務管理の不明瞭な状況が残業代の不払いを助長するため、自分でも記録を取っておきましょう。
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残業代が出ない職種

残業が出ない以下の職種について解説します。
- 地方公務員
- 飲食・アパレル関連職
- ITエンジニア・研究職
地方公務員
地方公務員で問題なのは、サービス残業が「公務員の使命」として職場に浸透している点です。選挙事務や災害対応などの特殊業務でも、地方公務員は残業時間が適切に計上されないことがあります。地方公務員法の特性上、民間企業のような労働基準法の全面適用がないため、残業代請求の仕組みも異なります。
地方公務員の残業代が支払われない理由は以下のとおりです。
- 特殊勤務手当
- 変則的な勤務体系
- 管理職の扱い
- 予算不足と過少申告
地方公務員で不服がある場合は、人事委員会や公平委員会への申し立てが基本的な手段です。多くの場合は労働組合(職員組合)を通じた交渉で解決を目指します。自治体によっては条例で残業代の上限時間が設定されており、超えた分は支給されないケースもあります。
地方公務員は制度的な問題により、残業代不払いが構造的に生じていることが実態です。
飲食・アパレル関連職

飲食やアパレル業界で働く方の多くが、労働時間と給与の不均衡に悩んでいることが現状です。残業代が出ないのは、飲食やアパレル業界では労働時間の管理方法に課題があるためです。飲食やアパレル業界は以下の状況が日常的に発生しています。
- 営業時間外の準備や片付け
- 閉店後の売上集計や商品整理
- シフト間の短い休憩時間
- 繁忙期の労働時間の過少申告
店長やマネージャーは管理監督者という扱いで、残業代の支払いの対象外とされやすいです。しかし、管理監督者でも実際には一般社員と同様の業務を行いながら、残業代だけが支払われない状況となります。繁忙期には長時間労働が常態化していても、残業代が適切に支払われないケースも目立ちます。
飲食やアパレル業界は人手不足によって1人当たりの業務量が増加しても、残業代は増えない矛盾した状況です。
ITエンジニア・研究職
ITエンジニアや研究職は残業代が出ないことが多い職種です。特殊な労働時間制度が適用されやすく、ITエンジニアや研究職は成果主義の評価体系になっています。ITエンジニアや研究職に残業代が支払われないケースは以下のとおりです。
- 裁量労働制の適用
- 専門業務型みなし労働時間制
- 成果報酬型給与体系
- サービス残業の常態化
- 客先常駐型の問題
スタートアップ企業に勤めるITエンジニアや研究職の方は注意が必要です。スタートアップ企業は経営危機や将来の株式価値を理由に、残業代の不払いが発生しやすい環境にあるためです。入社前に、労働条件や残業代の支払い基準が契約書や就業規則に明記されているかどうかをチェックしてください。
残業代が出ない場合の対処法

残業代は労働者の正当な権利であり、不払いがあれば適切な対応が重要です。残業が出ない場合の対処法は以下のとおりです。
- 労働時間の証拠を集める
- 上司や人事部に正式に説明を求める
- 専門の労働問題弁護士に相談する
- 労働基準監督署に相談する
労働時間の証拠を集める
残業代請求を成立させるには正確な労働時間の証拠が必要です。労働時間を証明するために、タイムカードや勤怠システムの記録を定期的に写真やスクリーンショットで保存しましょう。自分で労働時間の証拠を集めるためには、以下のような方法が効果的です。
- 出退勤時間を日記やカレンダーに毎日記録する
- 業務メールの送受信時間を保存する
- 業務用PCのログイン・ログアウト記録を付ける
- 社内チャットやビジネスツールの使用履歴を記録する
- 残業時の電話記録・通話履歴を残す
- オフィスの入退室を記録する
- 会議の議事録を保存する
労働時間を証明するためには、残業申請書や業務報告書のコピーを取っておくことも大切です。労働時間の証拠収集は地道な作業ですが、会社側が不払いを否定する場合でも残業代請求の際に有力な根拠となります。
上司や人事部に正式に説明を求める

残業代が出ない状況に対処するには、会社の正式な説明を求めることが重要です。残業代が出ない説明を求める際は、感情的にならず事実確認の姿勢で臨んでください。残業代が出ない状況に対処するためには以下の方法が効果的です。
- 上司への文書での説明依頼
- 人事部への労働時間制度の確認
- 就業規則と実態の相違点の指摘
- 面談の設定
残業代が出ない説明を求める際は内容をメモに残したり相手の同意を得て録音したりして、記録を残すことが大切です。不明点があれば質問し、説明が不十分な場合は書面での回答を要求しましょう。
専門の労働問題弁護士に相談する
労働問題に精通した弁護士への相談は、残業代が支払われない状況を改善するための有効な手段です。残業代請求には複雑な法律知識が必要なため、専門家のサポートは大きな助けになります。
多くの弁護士事務所では初回相談が無料のため、費用面を気にせず相談できます。弁護士費用は成功報酬制を採用している事務所が多く、残業代が支払われた場合にのみ報酬が発生する仕組みが一般的です。残業代請求の時効は2年間と短いため、早めの行動をおすすめします。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、残業代の未払いなど労働問題を解決するための公的な相談窓口です。労働基準監督署では、残業代未払いに関する相談を無料で受け付けています。申告者の個人情報は守秘義務により保護されているため、安心して労働基準監督署の利用が可能です。
労働基準監督署が調査を行い、違法性が認められれば会社に是正勧告が出されます。労働基準監督署への申告から解決までは数か月かかるので、根気強く待ちましょう。
まとめ

残業代が出ない職場で働いていても、諦める必要はありません。残業代が支払われない背景には、制度の不適切な運用やタイムカードの改ざん、残業時間の上限無視などの違法行為が挙げられます。自分の権利を知り、適切な証拠をしっかりと集めることで未払いの残業代の請求は可能です。
労働者には働いた時間の正当な対価を受け取る権利があります。自分の働き方を見直し、労働者の権利を守るための一歩を踏み出しましょう。